AhR(芳香族炭化水素受容体)を調和させると過敏症も改善

健康情報 > 酸化ストレス解消に電磁波対策 >

AhR(芳香族炭化水素受容体)とは

芳香族炭化水素受容体(AhR)とは何か、まずは手短な説明を

 芳香族炭化水素受容体(AhR:Aryl hydrocarbon Receptor)とは、人間を健康な状態に保つ人体のレセプターで、遺伝子と結合する部分がある他、働き方に個人差が大きいのが特徴です。
 多環芳香族炭化水素(PAH)に結合するため、化学物質過敏症の傾向が強い人ほど、このレセプターの活性が強いと考えられます。
 細胞の成長・分化、恒常性や生活リズム、薬物代謝に関係するため、働きが乱されると、体調不良になります。
 芳香族炭化水素受容体(AhR)の働きを変化させる性質を利用して、微量で治療効果を示すのが薬や芳香療法(アロマ)です。

芳香族炭化水素受容体(AhR)は、bHLH-PASファミリーに属する転写因子

 芳香族炭化水素受容体(AhR)とは、bHLH-PAS(Basic Helix-Loop-Helix−Per-Arnt-Sim)ファミリーに属する転写因子で、ほとんどの細胞に存在しています。
 リガンド(特定の受容体に特異的に結合する物質)と結合することで、遺伝子の転写を活性化します。

芳香族炭化水素受容体(AhR)の領域(ドメイン)構造

 アミノ基末端側には、塩基性でDNAとの結合に関与している領域と、二量体の形成に関与する領域が存在します。
 200-350アミノ酸残基にまたがっている2つのPAS領域(PAS-A、PAS-B)には、芳香族炭化水素受容体(AhR)の輸送体として働くARNTがあります。
 Period(Per)は、概日リズムの調節に関与します。
 Single Minded(Sim)の構造は、中枢神経の発達に重要な働きをします。
 カルボキシル基側領域は、転写を活性化します。

芳香族炭化水素受容体(AhR)の機能

 ほとんど全ての組織で機能し、肺や肝臓に発現が高く、肝臓の発達や血管形成などにも関係しています。リガンドが結合していない状態では不活性です。
 分子シャペロン(Hsp90、p23、XAP2)と会合した状態で細胞質に優位に存在し、リガンドと結合可能な立体配座(コンフォメーション)に保たれています。
 AhRR(芳香族炭化水素受容体抑制因子)がARNTに結合すると、芳香族炭化水素受容体(AhR)の活性は抑制されます。

芳香族炭化水素受容体(AhR)の転写活性化経路

 核内でARNTとAhR/ARNT複合体を形成し、DNA上のXRE(異物応答配列)に結合することで、転写活性化を引き起こします。
 AhR/ARNT複合体が、DNA上のXRE(異物応答配列)に結合し、ヒストンアセチル化酵素であるCBP/p300などのコアクチベータがリクルートされます。
 そのことで、RNAポリメラーゼIIのプロモーター領域への結合が促進され、mRNAの合成反応に関与していきます。

芳香族炭化水素受容体(AhR)を攪乱する多環芳香族炭化水素(PAH)

 芳香族炭化水素受容体(AhR)に多環芳香族炭化水素(PAH)が、リガンドとして結合すると、分子シャペロン(Hsp90、p23、XAP2)が解離し、核内へ移行します。
 芳香族炭化水素受容体(AhR)を媒介した代謝によって多環芳香族炭化水素(PAH)は毒性を発現します。そのメカニズムや毒性の種類は、完全には解明されていません。
 多環芳香族炭化水素(PAH)のリスクアセスメントの面から、芳香族炭化水素受容体(AhR)を媒介した毒性の種類、役割や構造等の情報を考えていく必要があります。
 芳香族炭化水素受容体(AhR)は健康状態に大きな影響を与えますが、完全には解明されていないのが現状で、これから解明されていく研究分野です。
 DS元気HSPも活用してください。

芳香族炭化水素受容体(AhR)は薬物代謝酵素(解毒酵素)の誘導に関与し、異物を代謝

芳香族炭化水素受容体(AhR)が調節する薬物代謝酵素には、CYP(シトクロムP450)に属するものや、それ以外のものも

 R-H(基質) + O2 + NAD(P)H + H+ →(CYP)→ R-OH(代謝された基質) + H2O + NAD(P)+

CYP(シトクロムP450)

CYP1A1(染色体:15、位置:75011883〜75017877)

CYP1A2(染色体:15、位置:75041184〜75048941)

CYP1B1(染色体:2、位置:38294746〜38303323)

CYP2E1(染色体:10、位置:135340867〜135352620)

芳香族炭化水素受容体(AhR)の分子構造

機能から3つの構造に分類

 芳香族炭化水素受容体(AhR)の機能は、個々の影響が複合されるため、全体で考える必要があります。

遺伝子と反応

 少なくとも26の遺伝子と反応することが確認されています。

芳香族炭化水素受容体(AhR)が媒介する健康への影響

芳香族炭化水素受容体(AhR)が媒介する健康への影響は、完全には解明されていません

 健康状態における芳香族炭化水素受容体(AhR)の役割やそのメカニズム、内在性のリガンドがあるのかどうかなど、基礎的な部分が未解明です。

芳香族炭化水素受容体(AhR)を持つ組織

 人間の通常の組織や細胞の中に存在して、重要な役割を果たしています。
 骨髄では、造血前駆細胞に特異的に発現しています。

特定のリガンドを投与(administrate)した結果から分類した芳香族炭化水素受容体(AhR)の役割

細胞の成長、分化

 細胞の成長や分化を誘発するタンパク質の生産を司るいくつかの遺伝子は、芳香族炭化水素受容体(AhR)がアゴニストです。
 これらのタンパク質の例としては、プラスミノゲン活性因子抑制をするもの、上皮成長因子、インターロイキン1β、トランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor)α、β2などです。
 リガンドが外界から摂取されると芳香族炭化水素受容体(AhR)と結合してしまうため、これらタンパク質の生産のバランスが崩れます。

恒常性、24時間周期のリズム

 恒常性や24時間周期のリズムを調節するタンパク質の合成を司る遺伝子も芳香族炭化水素受容体(AhR)のアゴニストです。
 これらの機能が異常でも、その機能特有な健康への悪影響を示す症状がないため、この機能のリスク評価は難しいです。
 24時間周期のリズムを制御するPeriod 2というタンパク質には、細胞のガン化を抑制する作用がありますから、24時間周期のリズムの乱れも、発ガン機構の一部になっています。
 芳香族炭化水素受容体(AhR)の恒常性、24時間周期のリズムを無視することはできません。
 細胞の成長、分化、恒常性、24時間周期のリズムは、細胞の増殖を調節するという点で、促進過程の重要な位置を占めています。

芳香族炭化水素受容体(AhR)とリガンドの結合過程と多環芳香族炭化水素(PAH)による細胞への影響

多環芳香族炭化水素(PAH)には芳香族炭化水素受容体(AhR)、ARNT、AHREとの結合を抑制する働きがあります

 リガンドとARNTと芳香族炭化水素受容体(AhR)で複合体が形成されます。
 多環芳香族炭化水素(PAH)は、芳香族炭化水素受容体(AhR)とリン酸化で結合し、芳香族炭化水素受容体(AhR)の感受性にも悪影響を与えます。
 複合体が核内に取りこまれることで、芳香族炭化水素受容体(AhR)とリガンドのバランスが崩れてしまい、健康に悪影響を及ぼすことになります。
 芳香族炭化水素受容体(AhR)が核内に取りこまれると、細胞内の芳香族炭化水素受容体(AhR)数は減少します。
 受容体はリガンドと分離し、リサイクルされます。一部は複合体のまま、分解されます。
 リガンド数が多すぎると、芳香族炭化水素受容体(AhR)の減少速度が合成速度以上になり、細胞内の芳香族炭化水素受容体(AhR)が減少します。
 多環芳香族炭化水素(PAH)に暴露されると、細胞内が異常な状態になります。この状態は、発現低下と呼ばれます。

芳香族炭化水素受容体(AhR)と結合する多環芳香族炭化水素(PAH)の発ガン作用

 多環芳香族炭化水素(PAH)は、癌原遺伝子を誘導します。
 多環芳香族炭化水素(PAH)を媒介することで、上皮成長因子受容体が発現低下し、発ガン作用のメカニズムが働きやすくなります。
 発癌性の研究は、発動因子が主要ですが、芳香族炭化水素受容体(AhR)のリガンドを視点においた発癌補助物質の研究も重要です。

芳香族炭化水素受容体(AhR)の手がかりとなる疑問

体内中に、内在性のリガンドは、存在するのか?

 芳香族炭化水素受容体(AhR)の働きは、未解明な部分が多いです。
 手がかりとなる疑問は「体内中に、内在性のリガンドは、存在するのか」で、これは現在でも未解明です。
 芳香族炭化水素受容体(AhR)のリガンドに近いものは、植物が生産するindole-3-carbinol(抗腫瘍作用をもつインドール化合物)です。

芳香族炭化水素受容体(AhR)は、生体異物のみに結合するのか?

 芳香族炭化水素受容体(AhR)は、生体異物のみに結合するのか否かは、芳香族炭化水素受容体(AhR)が健康状態でどのような働きをしているのかを解明するためにも重要な情報です。

芳香族炭化水素受容体(AhR)の用語解説

リガンド

 特定の受容体に特異的に結合する物質。
 例えば、「酵素タンパク質とその基質」、「ホルモンや神経伝達物質などのシグナル物質とその受容体」などが顕著な例。
 タンパク質と特異的に結合するリガンドは、微量であっても生体に対して非常に大きな影響を与えるため、薬学や分子生物学の分野では重要な研究対象。

アゴニスト

 リガンドの代わりに機能する薬物。
 受容体に結合し、細胞内シグナルを活性化します。

発現

 細胞内への受容体の取り込み速度が上昇すると、合成速度を越えてしまうため、受容体数が減少して発現が低下します。

癌原遺伝子

 変異や組換えで、発癌遺伝子に変換可能な遺伝子。

上皮細胞

 体内に取りこんだ化学物質と最も接触しやすい細胞の一つ。
 巨大な分子、粒子などが血中に入り込まない障壁の役割をしています。
 気管や鼻腔の場合、物理的、化学的障害(ディーゼル排気の吸入など)により、透過性が増加します。

上皮成長因子

 PM2.5には芳香族炭化水素受容体(AhR)のリガンドとなる多環芳香族炭化水素(PAH)が含まれているため、芳香族炭化水素受容体(AhR)を媒介して悪影響を与えています。

インターロイキン

 サイトカインの一つ。
 アレルギーの抗体であるIgE産生に影響を及ぼすため、大気中の多環芳香族炭化水素(PAH)でアレルギーも。
 芳香族炭化水素受容体(AhR)を媒介して、生体内で、IgE増加に関与し、IgEを生産する遺伝子も活性化させます。

サイトカイン

 受容体とリガンドの結合をきっかけに、細胞の分化、増殖、機能発現を行うタンパク質。

提供:おかだうえ鍼灸治療院